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中国留学体験記

  始めに、留学体験記と題しているが、インターンシップ制度で海外就労したことを断っておく。こはここ12前から私の学校で推奨されている制度で、それに肖って私は中国、北京にある中国社会科学院という、人文社会系で権威のある研究所に3ヶ月就労してきた。時期2011の秋から冬の始まり、9月の終わりから12月の終わりまで。この期間に体験した中国での生活について簡単に報告する。

 まず、研修で行ったことについて簡単に説明すると、私は博士後期過程で音声(感情音声)に関する研究を行っており、音声合成によって基本周波数を制御した音声を呈示し、被験者の脳活動計測している。これに関連して中国人を対象に脳活動計測を行うことが今回の課題であった。脳活動計測にはelectroencephalogram(EEG,正確にはdense array EEG)を用いたのだが、これは128 chの頭部の電極によって脳波を捉える装置で、数msの時間分解能、20-30 mmの空間分解能を有している。そこで、呈示した音声を被験者が聴いの脳活動を時間的、空間的に調べることを目的とした(この結果は6月の聴覚研究会で報告している)。当然、日本とは違う環境であるので、実験には多少?の苦労があった。まず、被験者の確保、実験器具の準備、防音室の確保(これは仕方が無いが)が思ったよりも捗らなかった。さて、実験準備も整ったし、実験を始めるぞ!と思った矢先に隣の部屋で工事が始まって音が響いてきたときはさすがに参った。しかし、親切な研究所の人達に支えられて、なんとか無事実験を終えることが出来た。

 私がお世話になったLi Aijun先生の語音研究室には1015人程の研究員がおり、週一回のミーティングや英語での講演では盛んな議論が飛び交っており刺激になった。お昼には研究所の方と一緒に食堂に行き交流を深めた。

 次に生活について書こうと思ったところで、まず頭に浮かんできたのはスモッグで霞んだ空と自動車・自転車や人の煩雑さ、いくら待っても来ない忘れられた注文等の苦労した経験だった。海外に行って苦労するのは、やはり何と言っても言語である。研究所では英語でコミュニケーションできたのだが(これも相当大変だったのだが・・・)、街中ではもちろん中国語だけだ。漢字は何となく意味が掴めるのだが、日本とは使われ方が微妙に異なっている(余談だが、日本の「音響」は中国では「声学」になるらしい。「手紙」は中国では「トイレットペーパー」になるらしい)。同じ漢字だから何とかなるだろうと、「早 食事 (初期の食品事(google翻訳))」と書いた紙を渡したところで、なかなか伝わらないわけだ・・・。まず中国に行くには「我要」を覚えて行ってほしい。これが言えれば苦労は減るだろう(: 我要啤酒(ウォーヤオピージゥ)ビールが欲しい!)


       ビールと餃子.

 北京には故宮をはじめ、多くの文化遺産があり、休日はよく観光に出掛けた。北陸先端大OBの先生や研究室の仲間に万里の長城や北京で一番おしゃれな街である西单に連れて行ってもらった。11月の終わりには研究室総出で郊外へ慰安旅行に行き、楽しい休日を過ごした。ここではとんでもない辛さの鍋を皆でつつき、中国式乾杯(干杯(カンペィ)文字通り注がれた杯を飲み干す)の試練も受け、辛い体験もした。また、週末を利用して西安に一人旅したので、そのことについて最後に少し書こうと思う。

北京から西安までは深夜特急で片道約12時間。寝台列車は好きな方なので、さほど苦痛ではなかった。今回、中国に行くにあたり暇つぶしにと、買ったものの読んでいなかった「唐詩選」を本棚の中から引っ張り出しだして持ってきた。西安は秦,漢,隋や唐など、9世紀頃まで長安として栄えた都であり、唐詩選に代表されるような芸術も沢山輩出された都市だ。

         西安駅前

なぜか日本の京都のような街を勝手に想像していたのだが、着いてみると京都というより、大阪に近い雰囲気だった(:私個人の感想です)。一度地図を広げようものなら、わしゃわしゃと観光案内の現地の人があらわれ、なかなか引き下がらない。とにかくエネルギーが凄まじい。中国史が割と好きだったので、兵馬俑や歴史博物館を見に行った。中国の遺産を見て回りながら、中国の歴史を肌で感じる。紛争や統一を繰り返して新しい国家を形成する。シルクロードなどにより、異国の文化と融合し新しい芸術が生まれてくる。そういったものを見ながら、ふと現在の一点だけをみていてはだめだなぁ、と思った。時間的なベクトルを追う、空間的な広がりを感じることにって、より大局的な観点から物事を捉えられるようになる。研究でも、行き詰ってしまった時は視点を変えることによって解決に向かうこともある。これからはもっとより広い視点から物事を考えて研究したいと思った。

今回3ヶ月と短い期間ではあったが、研究室の興味深い研究や熱心な研究姿勢から学ぶ事も多く、日本とは違う風習文化に触れ合いながら研究を行う事が出来てとても刺激的であった。このような機会を頂けたことに感謝したい。またお世話になった研究室の方々にも感謝したい(謝謝!)実験の解析と研究はまだまだ途中段階だが、時間と空間を再認識させてくれた3ヶ月であった。今後この経験を活かして研究を行っていきたい。

濱田康弘 (北陸先端大 D3)
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